文学的文章の読解

 教科書や入試などに出てくる文学作品には,必ず主人公がいます。そして,物語の推移に従って主人公の心理が変化します。この主人公の心理変化から何が読み取れるか,が作品の主題となります。(全ての文学作品がそうだ,とは言いません。ですからわたしは,あえて「文学文章」と呼んでいます。)

 文学的文章の読解とは,主人公の心理変化をつかむことと,その変化から何が言えるかを考えることです。そして,特にテストでは,主人公の心理に関わる問題が出題されます。

1 舞台設定をつかむ

 文学的文章を読解するためには,その作品がどのような“世界”なのかを知らなくてはいけません。文学的文章は,作者の創り出した“世界”です。この“世界”は,“いつ(時間設定)”と“どこ(空間設定)”と“だれ(登場人物設定)”の三つで成り立っています。

 “いつ”とは,その作品世界の時間です。「朝・昼・夜」という一日の時間帯ばかりではありません。「春・夏・秋・冬」という季節の設定もあります。また「第二次世界大戦中」等の時代も大切な要素です。

 作品世界の時間は,私たちの時間とは異なり,過去から未来に同じ速さで流れてはいません。たった一行で何年も時間が経ってしまうことがあります。逆に,たった数秒の出来事が何ページにもわたって書かれることもあります。現在から一瞬にして何年も先の未来にとんでしまうのです。過去から未来ばかりではありません。「回想の場面」のように過去に移動することもあります。

 “どこ”とは,登場人物がいる場所のことです。

 “だれ”とは,登場人物のことです。特に主人公は誰かを考えます。

 この3つは,作品冒頭部で語られることが多いようです。ですから,なるべく早く…最初の1~2段落以内に読み取れるようにしましょう。

 また,“いつ”と“どこ”のどちらかで作品に描かれる“舞台”が変わり,それによって意味段落が別れることが多いようです。

2 登場人物は「心理」と「状況」によって「行動」する

 作品の最初から最後まで,気持ちも体も何の変化もしない登場人物がいたら,その人物は主人公と言えるでしょうか。これは無理ですね。主人公とは,ストーリーの展開にともなって心理が変化し続ける存在でなくてはいけません。

 ですから、2年生で学習する「アイスプラネット」のぐうちゃんや3年生で学習する「握手」のルロイ修道士は主人公ではありません。

 では,心理の変化は,なぜ起こるのでしょう。主人公の“心理”変化を引き起こすもっとも大きな要因として,周囲の人物の言動があります。誰かが何かを「言う」か「する」かして,それに対して主人公の“心理”が変化することが多いようです。また,周囲の人物ではなく,事故とか事件とか,天気の変化とか…主人公や他の登場人物が巻き込まれるような要因があります。これらはすべて主人公を取り巻く“状況”です。主人公の心理は,多くの場合“状況”が引き金になっています。

 主人公の“心理”が変化すると,どうなるでしょう。顔が赤くなる(血圧が上昇する)とか,動作が乱暴になるとか,思わず何か言うとか…必ず主人公の“行動”に現れます。

 主人公の“心理”は,ほとんどの場合,原因となる“状況”と結果とも言うべき“行動”によって判断することができます。ところが文学的文章の場合は,“状況”と“行動”が書かれていて“心理”が書かれていない…または,比喩等によってしか書かれていない場合が多いのです。ですからテストの問題で「この時の気持ちは?」と聞かれます。そんな時は,傍線をひいてある直前・直後をよく読んで,直接関わりのある“状況”と“行動”を探し,“心理”を推測すればよいのです。(該当する記述のない問題は「悪問」です。)

 これ以外に“心理”の変化は「最初はこう思っていたけれど,よく考えたらこうなので,だんだん腹がたってきた」という主人公の思考が原因となる場合があります。この場合は,はっきり心理の変化がテキストに書かれているので,安心しましょう。

叙述の種類