現代文学の時代背景

 文学作品読解は、まず「いつ」「どこ」「だれ」をより早くより正確につかむことです。入試等に出題される文章のいくつかは、時代背景を知っていることで素早い読解が可能となります。

    ここでは、戦後の時代背景について解説します。それぞれの時代に何があったかを知るとともに、登場人物の年齢から、どんな人生を送ってきたのかを推測し、読解に役立てましょう。

 (この文章は、2017年現在のものです。)


戦前

「昭和一桁世代」 現在80歳代

 昭和のはじまりと共に、世界的な大恐慌が起こった。そしての軍部が満州事変を起こし(1931)、国際連盟から脱退(1933)、日中戦争・太平洋戦争(1937~1945)に突入した。

 この人たちは、29年生まれ以前の前期と、30年生まれ以降の後期に分けられる。

    前期は戦地への動員、軍事工場での労働などで戦争に参加した経験がある。一方後期は学童疎開を経験している。この経験は、焼け跡世代と重複している。この人たちは、50歳代にオイルショックを経験したが、定年のころはバブル景気の最中で、定年後の生活は相当幸せであったといわれている。

    この世代の特徴としては、戦争の時代を生き抜いたという自負と、高度成長を支えてきたことから、非常に上から目線であることがあげらている。

 

    代表的な登場人物としては、『字のない葉書』の主人公「邦子」『大人になれなかった弟たちに…』の主人公「ぼく」。彼等は終戦直前の大空襲や原爆投下を経験している。

 他にマンガ『サザエさん』のフグ田サザエ(旧姓イソノ)がいる。ルパン三世の銭形警部はこの世代の特長をふまえて設定されている。(ただし年齢は「サザエさん」化し、ゴルゴ13のように歳をとならい。)


1940(S15)年代=終戦の時代

1940年代前半 「焼け跡世代」 現在70歳代

    終戦直前の、敗戦に至る時代。小学校は「国民学校」(この時期以前は「尋常小学校」)と呼ばれた。教科書等の戦争関連作品といえばこの時代である。「防空壕」「配給切符」「空襲」等がキーワード。

 

    1945(S20)/03東京大空襲 /08広島原爆投下 /09降伏文書調印

  

    太平洋戦争中に小学校に入った39年3月生まれまでを「少国民世代」、後半期を「戦中生まれ世代」と呼ぶ。

    第二次世界大戦の悲惨さや食糧難を体験した最後の世代であり、「少国民世代」は終戦とともにそれまでの価値観が一変する大きな変化を体験した。(この次の「戦中生まれ世代」以降は、まだ物心がついていないので覚えていない。)

    この世代の特徴としては、子どもの頃の体験が強烈過ぎて、「日本の文化」「歴史と伝統」「環境や社会秩序」の維持に関心が高い。同時に社会的地位や名声を得たいという価値観も強いと言われている。 

    『ちいちゃんのかげおくり』のちいちゃん(1945東京大空襲で死亡)、『一つの花』のゆみ子や、『握手』の主人公「私」がこの世代と思われる。マンガ『ゴルゴ13』の主人公デューク東郷(仮名)と『ゲゲゲの鬼太郎』の主人公鬼太郎(おばけは歳をとらない。)

1940年代後半 「団塊の世代」 現在65~70歳

    日本は復員兵を迎え、空前のベビーブームが訪れる。同時に戦後の食糧難はピークを迎えた。第二次世界大戦終結後、アメリカとソビエトを中心とする東西冷戦が激化し、日本はアメリカの補助なしでは生きていくことが難しい時代だった。

 

 1945(S20)日本国憲法

  

    1947~1949の三年間になんと806万人が生まれ、生まれた瞬間から同学年間の競争が始まり、その突出した人口構成からいろいろな面で日本社会に大きな影響を及ぼしてきた。学生運動が盛んな頃を経験して成長してきたため、政治や社会に関心を持ち、学生運動の推進力になった。社会に出てからも人口比率が多いことから、良くも悪くも世間からの注目を浴びてきた。

    この世代の特徴としては、自己中心的で自分のことしか考えていないこと、敗戦直後、高度成長などの熱気のある時代を生きてきたために攻撃的な人が多いことがあげられる。また、子どもの頃からの強い競争心から自己主張が強い人と、多数派に付和雷同しやすい人の両極端に分かれていると言われている。いわゆる「安保闘争」はこの世代の人たちが支えた。

    『盆土産』の主人公『アイスプラネット』に登場するぐうちゃんがこの世代と思われる。

 


1950(S25)年代=戦後復興の時代

「しらけ世代」 現在50~65歳

1950年代前半(S25~)

 多くの植民地が独立し、冷戦は更に激化した。そのためアメリカの日本に対する占領政策が転換される(「逆コース」=それまで公職から追放されていた戦前の体制派を復権し、逆に共産党系を排除した)。東アジアでは朝鮮戦争(1950-)が起こり、日本ではそれに伴う特需景気が訪れた。

 

    1953(S28)テレビ放送始まる

 

1950年代後半(S30~)

「もはや戦後ではない」といわれ、高度経済成長がはじまった。集団就職(中学を卒業し、集団で地方から東京に就職すること)がピークになり、東京近郊には団地(集合住宅)ができた。『三丁目の夕日』のような古き良き昭和の風景の時代を指す。

    スタジオジブリ作品『となりのトトロ』はこの時代の埼玉県所沢市付近が舞台とされる。一方、同じスタジオジブリ作品『平成狸合戦ぽんぽこ』は、この時代の多摩市ニュータウン建設を舞台としており、急速に都市化が進んでいった時代でもあった。(完成した多摩市ニュータウンは同じジブリ作品の『耳をすませば』の舞台となる。)

    『アイスプラネット』の主人公達が住む家は、この時代のこの近くに建てられた(建てたのは主人公の曾祖父)と思われる。

 

    1958(S33)インスタントラーメン(日清チキンラーメン)発売開始。

 

    戦後復興の時代に生まれた人は、バブルが崩壊する前までに成人した。彼らの上司(焼け跡世代)から「新人類」とも呼ばれた。国立大学の共通一次試験(センター入試の前の制度)が開始される前に大学に入学した前期と、以降の「共通一次世代」に分けることもある。学生運動が盛んだった団塊世代への対抗心からか、社会に関心を持たない「今が楽しければいい」という世代と言われている。

    この世代の特徴としては、「無気力、無関心、無責任、無感動」の風潮が顕著になり、ノンポリ、個人生活優先主義に徹する傾向が強くあると言われている。団塊世代までとバブル世代に挟まれ、日本の流れが大きく変わる過渡期を過ごしてきた世代。

    『アイスプラネット』の主人公の少年はこの世代だと思われる。


1960(S35)年代=高度経済成長の時代

「バブル世代」  現在40歳代後半

「東京オリンピック」を契機に,高度経済成長が進んだ時代。アニメ『ドラえもん』に見られる空き地に土管があった時代。安保闘争(日米安全保障条約に反対する反政府,反米運動とそれに伴う政治闘争,傷害,放火,器物損壊などを伴う大規模暴動)がピークとなる。団塊の世代がこの闘争を支えた。『巨人の星』などのスポ根ものが大流行した。

  同時に公害が大きな社会問題としてクローズアップされた。またベトナム戦争にアメリカが参戦し泥沼化していった。『ウルトラマン』『ウルトラセブン』のシナリオには,これらがテーマとなっているものが多い。

 

    1962(S37)冷凍食品の海老フライ(赤海老フライ)発売開始

    1964(S39)東京オリンピック

 

 この時代に生まれた人は、バブル景気による売り手市場時に大卒生として入社したためこう呼ばれる。高度成長期に生まれ,おおむねずっと右肩上がりの時代に育ってきた世代。中高生の頃は,校内暴力発生件数が多発した。

  この世代の特徴としては,いわゆる「ちょっと変わっている人」が多く,バブルの頃に就職したためか金銭感覚がおかしく,見栄っ張りも多いと言われている。怒られ慣れていて,反省もせず,ケロッとしている人が多く,団塊の世代同様,他の世代からの非難の多い世代である。タケノコ族からアッシー,メッシ―,ミツグ君の世代で,軟弱な男性とヒステリックな女性を多く見かける。また,クレーマーが多くいるため,「人材の不良債権」とか「根拠のない自信過多」とも揶揄されている。

  マンガ『ちびまる子ちゃん』の主人公はこの世代だと思われる。

 『盆土産』では、父親が新発売となった冷凍海老フライを購入し、帰省している。


1970(S45)年代=オイルショックの時代

「氷河期世代」  現在35~40歳

 中東戦争を契機に,石油の価格が倍以上に跳ね上がり,物価が高騰,日本中がパニックとなった。右肩上がりの高度経済成長に陰りが見え始めた時代。この時期,校内暴力が社会的な問題となり,バブル世代はこの洗礼をうけた。学生運動もあさま山荘事件(1972)に見られるように終焉を迎えた。(劇場版アニメ『ルパン三世カリオストロの城』で銭形警部たちがカリオストロ城を囲んでカップラーメンを食べるシーンは,この事件へのオマージュである。)初期の『仮面ライダー』シリーズは,この不安な時代を強く反映している。西城秀樹や山本リンダが登場することからマンガ『ちびまる子ちゃん』はこの時代を背景として作られている。

 

    1970(S45)沖縄復帰・日本万国博覧会

    1971カップヌードル発売開始

    1973(S48)・1979(S54)石油危機(オイルショック)

    1974セブンイレブン1号店

    1978日中平和友好条約

 

 この時期に生まれた人は「氷河期世代」と呼ばれている。は高度経済成長期の終盤から安定成長期にかけて生まれた世代で,冷戦の世界や好景気の時代を知っている「団塊ジュニア」とそれを知らない「ポスト団塊ジュニア」の世代に分かれる。この世代は就職の時期に深刻な不況を迎え,フリーター、ニート、ひきこもり、派遣労働者、就職難民たちが多いため「ロストジェネレーション」とも呼ばれる。

 「氷河期世代」は、現在40歳代前半の「団塊ジュニア世代」(1972~1974年生まれ)と現在35~40歳の「ポスト団塊ジュニア世代」(1975~1981年生まれ)に分かれる。

 「団塊ジュニア世代」の人口は、団塊世代の次に多く,団塊世代の子供たちである。この世代が15歳前後になった時,高校生になると小遣いも増額し,この年齢層を狙った商品がヒットする確率が高いということから「イチゴ(15)世代」と呼ばれることもある。その後大学入試では「受験戦争」と呼ばれるほどの競争を強いられ,卒業時には「就職氷河期」に遭遇し,「貧乏くじ世代」とか「不運の世代」とも呼ばれている。 この世代の特徴としては,ほんの少しの神がかり的な成功者と,大多数の敗者のトラウマを抱える者とに分かれる。そのためか,些細なつまらないことをいつまでもこだわり続ける傾向にある。躾と礼儀は厳しく教育されているので,上の者に理不尽なことを言われても実行する,根性論が通用する最後の世代でもある。

  「ポスト団塊ジュニア世代」は、成長期において、いじめや機能不全家族の問題はあったが,多くの親の年収はまだ増加傾向にあり,一般的に言えば安定した少年少女時代を過ごした世代である。しかし,中高生時代にバブル崩壊が起こり,高卒時,大卒時は就職氷河期の真っ只中で,職探しに苦労した。特に97年は「超氷河期」と呼ばれていた。95年以降の携帯電話の普及により,新しいネット文化の担い手の中心になっている。

  この世代の特徴としては,将来の先行きが見えない社会に対して希望を失っているというわけではなく,格差があっても仕方ないとする割合が高い。親密な人間関係の重視こそがこの世代の生活価値の第一条件で,何よりも重要視しているのは家族との繋がりと考える,おとなしい世代と言われる。


1980(S55)年代=バブルの時代

「プレッシャー世代」 現在30~35歳

アメリカとの貿易摩擦が起こるほどバブル景気に沸いた時代。冷戦が終結した。また,「ゆとり教育」が始まった。マンガ『ドラゴンボール』の連載始まる。(1985-1996)

 

    1983(S58)ファミコン発売開始

    1989(H元)昭和天皇崩御。平成始まる。

 この世代の人たちは、社会への関心を抱く頃にはすでにバブルは崩壊していて,成長過程で「失われた10年」を目のあたりにしている。いろいろな場面で耐えなくてはいけないことが多く,比較的プレッシャーに強い世代ということから名付けられた。

  この世代の特徴としては,日本の景気のよかった時代を知らないという時代背景により,生きていくことにプレッシャーがあることを当然と思って育ってきた。明るさの中にもピリッとした一面もあって,ここ一番で力を発揮する人が多いと,評価の高い世代である。ネット界,ビジネス界,学問分野で,最近この世代の台頭が注目されている。友人を大切にし,生活への満足度が高いところもあり,この点においてはポスト団塊ジュニア世代と似通っている。


1990(H2)年代=失われた10年

「ゆとり世代」 現在20歳代

 バブルが完全に崩壊し,日本の不景気が始まった。またイラク戦争が盛んになる。阪神淡路大震災やオウム真理教によるテロ等,世紀末ということもあって,社会的にも不安・不安定な時代となった。

 

  1995(H7) 阪神淡路大震災・地下鉄サリン事件・プリクラ,携帯電話普及 

 「ゆとり教育」を受けて育った世代である。ゆとり教育は87年生まれの人が中3の時に始まり,2001年生まれの人が小1の時に終わる。1学年でもゆとり教育を受けた子どもは15学年にも及ぶ。義務教育の9年間が全てゆとり教育(移行措置を含む)であったのは,95年と96年生まれとなる。

 平成不況,リーマンショックの中でデフレが進み,学校は土曜日を休みとして完全5日制となり,学力は低下し,校内暴力は増加し,就職も2003年には大卒の就職率が過去最低の55%までに落ち込む。激戦を勝ち抜いて就職したにもかかわらず,社会に出てもすぐに辞めてしまう者が多いことが問題になった。

  この世代の特徴としては,全体的にゆるい繋がりを大切にすると言われている。「指示待ち人間が多い」「常識知らずで,自分中心に世界が回っていると考えている」「自信満々だが実践力がない」「打たれ弱い」などなど。他の世代から滅茶苦茶に言われている。結局,何を考えているのか他の世代からは理解されず,宇宙人とも呼ばれている。

  マンガ『クレヨンしんちゃん』の主人公野原しんのすけはこの頃生まれている。


2000年代=格差の時代

「さとり世代」 現在高校生~成人くらい

 1990年代後期に急増した自殺者が高止まりになった。外需主導のいざなみ景気により失われた10年が終わる。しかしデフレは解決せず,アメリカ同時多発テロ事件やリーマンショック後の世界同時不況の発生により再び深刻な不況に陥った。よってこの期間をまとめて失われた20年と指すようになった。

  格差社会が問題化する。ヒルズ族などの新しい富裕層とともにワーキングプア,ネットカフェ難民などの貧困層が現れた。特に失業や非正規雇用による若年層の貧困化とともに,過労死等を招くブラック企業,ひきこもりやニートが問題となった。

 「ゆとり世代」という呼び方は、若者層(当事者)から掲示板「2ちゃんねる」を通して自然発生的に広まったと言われ、蔑視用語と考えられることもある。内容的には次の「さとり世代」≒「ゆとり世代」であるが,ここでは,ゆとり教育後半の90年後半生まれ以降の区分とした。「ゆとり世代」の年齢層は、その一部が社会に出たばかりであり,どのように評価されるかは今後に待たれる。

  この世代の特徴としては,欲はなく,恋愛に興味はなく,無駄な努力をすることはなく,無駄遣いもすることはない。若いのにまるで悟りを開いたように,穏やかな精神を持った人たちが多いようである。「草食系」とも言われる。このため自動車の売れ行きが落ち自動車産業が不況に陥った。

  多くのライトノベルの主人公は高校生であり,この世代に含まれる。


2010年代

人格形成ができていないため分類不能

 東日本大震災によって引き起こされた福島原発事故(2011)により,原子力発電の是非を巡る議論がかつねないほど高まった。スマートフォンやタブレット端末が普及した。

 このサイトの中心的な読者の世代。どのような評価が下るかは、あなたたち自身の振る舞いによります。


2020年代

人格形成以前の状態のため分類不能

 乳幼児ですから……。