「批評」の言葉をためる


初めての「論説文」

1年では

「ダイコンは大きな根?」「ちょっと立ち止まって」「シカの落ち穂拾い」「幻の魚は生きていた」

2年では

「生物が記録する世界」「モアイは語る」「君は最後の晩餐を知っているか」

3年では

「月の起源を探る」

を勉強してきました。

 これらは、すべて説明的文章と呼ばれるものです。説明的文章とは、何かを説明しようとする文章のことです。そして今まで勉強してきたテキストは、すべて実際に存在するモノについて説明している文章です。

 これから勉強しようとしている「『批評』の言葉をためる」も、今まで勉強してきた説明的文章の中まで、「評論文」と言われています。

 評論文で説明しようとするのは、目に見えるモノではありません。筆者の頭の中にある「考え」や「主張」を説明しようとしています。ですからその分、難しい表現などがあり、「読みにくい」と感ずる人も多いかもしれません。

 しかし、高校入試の説明的文章の問題の中で一番多いのが、この評論文なのです。

 3年生では、もう1回「誰かのかわりに」という評論文がありますが、これは3学期の教材になっています。高校入試には間に合わないと思います。

 中学校で最初で(最後になるかもしれない)評論文の読み方を、ここでしっかりマスターしましょう。

評論文の読み方

  1. 文章全体の話題と筆者の主張(結論)をつかむ
  2. 書く段落冒頭の部分を読んで、文章全体をいくつかのブロックに分け、筆者の主張の流れのおおよそを理解する。
  3. 段落毎の要旨をつかむ

要約と要旨

 「要旨」とは、筆者が言いたいことで、文章の重要なポイントを短くまとめたものです。一方「要約」とは、長い文章を論理的に短くまとめたもので、乱暴な言い方をすると、あらすじと考えてもよいでしょう。

 例えば、A、B、C、Dの四つの段落があったとします。そして段落Dが結論にあたる段落だったとします。

 「要旨をまとめなさい」と言われたら、筆者が言いたいことをまとめればいいのですから、段落Dを中心にまとめなくてはいけません。

 一方「要約しなさい」と言われたら、A、B、C、Dの四つのそれぞれの段落の要点(大事な点)を抜き出し、それを論の展開にそって、その順番通りにまとめなくてはいけません。ですから、要約する場合は、要約するために不必要な部分を削りながら文章をまとめるというマイナスの発想が必要です。

「『批評』の言葉をためる」の特徴

 この文章は、『中学生からの「超」哲学入門』という本の一部です。教科書に載っている部分は、A4一枚程度の分量になります。

 「『批判』から『批評』へ」とか、「言葉のキャッチボールの中で」といった見出しは、実は教科書として印刷したときに、ある程度わかりやすくなるように区切った結果です。ですからよ、く読んでみると、論の展開として区切ってはいけないところで区切ってしまう部分がいくつかあります。

 教科書の見出しに関係なく、普通の文章を読むつもりで読んでみましょう。

キーワード

 キーワードを含むテキストの部分を抜き出してまとめました。これを読めば、その言葉のおおよその意味がわかると思います。

 ここでA~Mは、段落番号です。(Aは第1段落、Mは第13段落です。ダウンロード版のテキストに準拠してあります。)

「批評する言葉」をためる

  • その(自分を理解する)ためには、言葉を「ためる」ことが重要(A)
  • 大事なのは、それ(自分を理解するのに必要な言葉)が「批評する言葉」としてたまってくるところにある(B)
  • (「批判」は)「批評する言葉」にまでは成熟していない。しかし、~「批判」は、少しずつ「批評」になっていく。(D)
  • 理由がきちんと言えるようになると、「批判」は「批評」に近づく(E)
  • 「批評」とは、自分なりの価値判断の根拠を明確にして、物事を評価すること(E 定義文)
  • (「批評」する)ためには、自分の考えを的確に表現できるだけの言葉をためている必要がある(E)
  • 「批評する言葉」をためるとは、どういうことだろうか(F)
  • 信頼できる人間と何かを批評しあうというのは、そういう言葉のキャッチボールをすること=それぞれの感じ方をよく聴き取りながら、互いに主張したり、反論したり、納得したりすること(G)
  • こうした言葉のキャッチボールの中で、私たちは、「批評する言葉」をためている=つまり、相手に届くよい言葉を探す努力と、相手の言い分をくみ取れるよい耳を育てる努力をしている(H)
  • 批評ができるようになると、友達どうしの関係も変わってくる(I)
  • 友達同士で「批評」を交わし合うこと=互いに「自己ルール」を言葉によって交換し合うということ(I)
  • いろいろなものを批評し合うことで、~「自己ルール」を確かめ合い、認め合い、そして調整し合っていく=そこに人間同士のコミュニケーションの内実がある(I)
  • 批評し合う関係によってしか、人は「自己ルール」を理解することはできない(J)
  • 私たちは批評し合うことを通して、さまざまな①他者の「自己ルール」と自分の「自己ルール」との違いを少しずつ理解する(K)
  • 批評を重ねてゆくことで、私たちは②互いの「自己ルール」を、常によりよい形に編み出していく(K)
  • 批評し合うことの中には、③自分の感受性を高めていくという側面も含まれている(L)
  • 言葉のキャッチボールを通して自分の中に「批評する言葉」をため、言葉の力を育てていく努力(L)
  • 「批評する言葉」をためて、言葉の力を育てていくために必要なこと(M)

コメント: 0