3 シラーの「人質」読み、学習問題をもつ
- 前の時間に、たくさんの謎を発見しましたが、この謎を解き明かしていきましょう。実はこの文章には元ネタがあります。この元ネタと「走れメロス」を比べて、なぜ作者は元ネタをこのように書き換えたのか考えていきましょう。
全員がそれができたのを確かめ、ゆっくりと「人質」を読みながら「走れメロス」に傍線を引かせていきます。
全文を読み通したら、感想を発表させます。
当然「そっくりだ」という感想の他に「なぜ書き加えたり変えたりしたのだろう」という疑問が出されるでしょう。
そこでグループで、作者が書き加えた内容と書き改めた内容を確認させ、発表させます。
「人質」に対して大きく書き加えられたり書き改められたりした内容は以下の通りです。
- メロスが暗殺を企てる動機=王は「人を信ずることができぬ」という理由で粛清を行う。
- メロスと王のやりとり1=「人の心」を疑うVS疑わない
- メロスと王のやりとり2=メロスの約束に対する王の気持ち
- 妹の結婚式の場面=メロスの葛藤
- メロスが出発する場面=「人の信実の存するところを見せてやろう」
- 濁流と山賊の場面=「愛と誠の偉大な力」
- 倒れる直前のメロスの心情=約束不履行に対する言い訳
- 清水を飲んで歩き始める場面=義務遂行の希望から行動へ
- フィロストラトスとの会話=「もっと恐ろしく大きいもののために走っている」
- 刑場=互いの頬を殴り合う
- 終末=メロスの赤面
これらを時系列に沿って板書していきますが、全部出てこなくてもかまいません。
「作者はなぜこのように書き足したり書き加えたりしたのか」という問いは、感想発表の段階で出てくればよいのですが、もし出てこなければ「なぜこう書いたんだろうね」と問いかけ、意識づけていきます。
「作者はなぜこのように書き足したり書き加えたりしたのか」という問いは、感想発表の段階で出てくればよいのですが、もし出てこなければ「なぜこう書いたんだろうね」と問いかけ、意識づけていきます。
この段階で生徒たちは、だだ出しただけなので、どのような内容なのかの共通認識は持っていません。
そこで次の時間に
- 「走れメロス」を「人質」と比べることで、「走れメロス」の謎を解き明かしていこう。
4時間目 「走れメロス」と「人質」を比較し、作者の意図を考える
1~11の場面は、いくつかのエピソードとして以下のように統合することができます。
- Ep.1 1~3 メロスと王=対比
- Ep.2 4~5 妹の結婚式=メロスの決意に至る逡巡
- Ep.3 6 濁流と山賊=外的阻害要因
- Ep.4 7~8 悪い夢=内的阻害要因
- Ep.5 9 フィロストラトスとの会話=走る目的
- Ep.6 10 互いの頬を殴り合う=信実
六つに分けたのは、班の数による都合です。
意図的に11は入れてありません。
班の数の都合もありましたが、物語の展開から唐突な感じがするからです。
だいたい少女は、王の宣伝のために集められた民衆の一人です。
それまでの細かなメロスの心情の経緯などわかりっこありません。
作者は何らかの意図があってこのエピソードを書き加えたのだと思いますが、それを論証することは難しいでしょう。
ちなみに、中世でマントは権威の象徴で、緋色のマントを羽織った皇帝の肖像が残されています。
緋のマントを着たディオニシス2世とダモクレス
赤はもともと神聖な意味を持った色とされていました。(今では共産主義の色ですね。)
ですからメロス=英雄というイメージを持たせたかったのかも知れません。
もっとも「緋色」と訳されるスカーレットは枢機卿の色であると同時に、淫婦や姦通の象徴でもあるそうです。
「英雄メロスが無位無冠であるのが恥ずかしいので権威を持たせたかった」という解釈ならまだいいのですが、「少女は尻軽女だった」というトンデモ解釈に陥らないためにも生徒には追究させたくありません。
意図的に11は入れてありません。
班の数の都合もありましたが、物語の展開から唐突な感じがするからです。
だいたい少女は、王の宣伝のために集められた民衆の一人です。
それまでの細かなメロスの心情の経緯などわかりっこありません。
作者は何らかの意図があってこのエピソードを書き加えたのだと思いますが、それを論証することは難しいでしょう。
ちなみに、中世でマントは権威の象徴で、緋色のマントを羽織った皇帝の肖像が残されています。
緋のマントを着たディオニシス2世とダモクレス
赤はもともと神聖な意味を持った色とされていました。(今では共産主義の色ですね。)
ですからメロス=英雄というイメージを持たせたかったのかも知れません。
もっとも「緋色」と訳されるスカーレットは枢機卿の色であると同時に、淫婦や姦通の象徴でもあるそうです。
「英雄メロスが無位無冠であるのが恥ずかしいので権威を持たせたかった」という解釈ならまだいいのですが、「少女は尻軽女だった」というトンデモ解釈に陥らないためにも生徒には追究させたくありません。
それぞれの班にエピソードを割り振り、まず一人一人で次にグループで
- どんな違いがあるのか、言葉に注意して傍線をひきながら細かくチェックし、なぜ書き加えたり書き直したりしたのだろう。考えてみよう。
そして「『走れメロス』はこう書いてあるが、『人質』はこうなっている(書かれていない)。
これは、作者にこのような意図があったためだと思う」というようにまとめさせ、発表させます。
これは、作者にこのような意図があったためだと思う」というようにまとめさせ、発表させます。
この発表を聞きながら、ストーリーに沿って板書していきます。
だいたい次のような内容になると思います。
だいたい次のような内容になると思います。
- Ep.1 「人の心」に対し、メロスは疑わない、王は疑う、という性格の違いをはっきりさせている。
- Ep.2 刑場に戻ることを迷う心の葛藤と、それを振り切って「信実」を示そうとする自分は「偉い男」で周囲は「誇り」に思うべきだという、メロスの自己陶酔的な性格をはっきりさせている。
- Ep.3 濁流や山賊などの外的要因に対して、「愛と誠」「正義」は負けなかったことを示している。
- Ep.4 疲労によって生じた心の弱さから、「自分は醜い裏切り者だ」と考えたことを強調している。
- Ep.5 フィロストラトスがメロスの家令からセリヌンティウスの弟子になっている。また、メロスが走る理由を、「人質」では遅れても自分も死ぬことで王に「愛と誠を信じさせてやる」というのが目的であるのに対し「走れメロス」では「もっと恐ろしく大きいもののために走っている」となっている。
- Ep.6 一度は「信実」を裏切った二人は、互いを罰することにより赦しあったことを示している。
この通り出てくることは少ないと思います。しかしそれはそれでかまいません。
生徒の考えのままエピソード順に板書していきます。
大切なことは複数のテキストを読み、抽出した要素から一つの結論を出す「考える力」を育てることなのです。
生徒の考えのままエピソード順に板書していきます。
大切なことは複数のテキストを読み、抽出した要素から一つの結論を出す「考える力」を育てることなのです。
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