朝のリレー


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 国語の授業のスタートとして、この詩で学ぶべきことは次の通りです。

  • 詩の基本的なルールを学ぶ。
  • 作者が伝えたいことは何かを捉える。

 当然定期テストでも、これがわかっているかが問われます。

朝のリレー

         谷川俊太郎

  1.  カムチャッカの若者が
  2.  きりんの夢を見ているとき
  3.  メキシコの娘は
  4.  朝もやの中でバスを待っている
  5.  ニューヨークの少女が
  6.  ほほえみながら寝がえりをうつとき
  7.  ローマの少年は
  8.  柱頭を染める朝陽にウインクする
  9.  この地球では
  10.  いつもどこかで朝がはじまっている
  11.    ぼくらは朝をリレーするのだ
  12.    経度から経度へと
  13.    そうしていわば交替で地球を守る
  14.    眠る前のひととき耳をすますと
  15.    どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる
  16.    それはあなたの送った朝を
  17.    誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ

 詩をよく見ると、11行目が空いています。この空いている行に区切られたまとまりを、詩では連と言います。連は、文章の段落にあたるものです。

 この詩は1行目~10行目の第一連と、12行目~18行目の第二連の、二連構成となっています。

 第一連では、9~10行目の「この地球では/いつもどこかで朝をはじまっている(誰かが朝を迎えている)」ことが作者の言いたいことです。

 第二連をまとめると、次のようになります。

経度から経度へと、ぼくらは朝をリレーして、交替で地球を守っているようなものだ。どこか遠くで鳴っている目覚時計のベルの音は、あなたの送った朝を、誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ。

 作者は、第一連から、人間を地域や人種、国の違いを超えた「地球人」としてとらえようとしていることがわかります。そして「想像力をほんの少し働かせれば、遠く離れた世界のことも、ごく身近に感じ取ることができる」と言いたかったように思います。

 詩は、使われている言葉によって現代語(口語体)で書かれた口語詩と、昔風の言葉(文語体)で書かれた文語詩とに別れます。また各行の音数(リズム)が一定した定型詩と、音数にとらわれない自由詩とに別れます。

 この使われている言葉と音数を組み合わせて、詩の形式は次の四つに分かれます。

  • 口語自由詩
  • 口語定型詩
  • 文語自由詩
  • 文語定型詩

 また、この四つ以外に、行にとらわれない散文詩というものがあります。


表現技法から考えよう

対句

 第一連1行目~8行目は「○○の△△が□□しているとき/●●の▲▲は■■している」が繰り返されています。このように、語順が同じで対照的な言葉を並べて表現する表現技法を対句(ついく)といいます。

 対句には、対照的に並べることによって内容を強調する効果があります。では、何と何を対照して、何を強調しているのでしょうか。

 この詩では、

  • カムチャッカの若者が/きりんの夢を見ているとき
  • メキシコの娘は/朝もやの中でバスを待っている

が対句です。そして

  • ニューヨークの少女が/ほほえみながら寝がえりをうつとき
  • ローマの少年は/柱頭を染める朝陽にウインクする

も対句です。

 さらに、

  • カムチャッカの若者が/きりんの夢を見ているとき//メキシコの娘は/朝もやの中でバスを待っている
  • ニューヨークの少女が/ほほえみながら寝がえりをうつとき//ローマの少年は/柱頭を染める朝陽にウインクする

も対句です。

 

 第一連の最初の八行は、対句が二段構えになっています。

 

 これをもとに、第一連を解釈していきましょう。

緯度と経度

 1行目のカムチャッカは、北緯57度東経160度、ロシアの東のはずれ、千島列島の先にあります。

 3行目のメキシコは北緯19度西経100度、中米にあります。

 カムチャッカは北極の近くの東の寒い国、メキシコは赤道の近くの西の暑い国です。北と南、東と西、寒いと暑いで対照的な地域と言えます。

5行目のニューヨークは北緯40度西経74度、アメリカ合衆国にあります。

7行目のローマは北緯41度東経12度にある、ヨーロッパのイタリアにあります。

 ニューヨークもローマも緯度がほぼ同じですが、海流の影響でニューヨークは寒く、地中海性気候のローマは温かい国です。そしてニューヨークは近代的な大都会、ローマは「柱頭(古代ギリシアローマ建築の柱の頭の部分)」という言葉からもわかるように、遺跡が残る街です。

 ですからここも西と東、寒と温、近代的な大都会と遺跡が残る街で対照的になっています。

カムチャッカの若者は男か女か

 「ニューヨークの少女」「ローマの少年」が対(つい)になっていますから「メキシコの娘」と対になる若者は男に違いありません。

過去・現在・未来

 カムチャッカの若者が「夢をみているとき」、メキシコの娘は「朝もやの中」にいます。これはどのような状態なのか、具体的に考えてみましょう。

 例えば日本が午前9時のとき、インドは3時間30分遅れていて、まだ明け方の5時30分です。これを時差(じさ)といいます。

 

  時差は国や地域ごとに異なっています。

 「カムチャッカの若者」が夢を見ているのが4月1日の真夜中、午前0時とします。このときメキシコは日付変更線をはさんでいますから、まだ4月1日にはなっていません。前日の3月31日の午前6時です。メキシコの娘が朝もやの中でバスを待っているのは、カムチャッカの若者にとっては前日の出来事なのです。

 同じようにニューヨークが4月1日の真夜中午前0時のとき、ローマは同じ4月1日の午前6時、夜明けを迎えます。ニューヨークの少女にとって、ローマの少年は未来にいるといってもよいでしょう。

 カムチャッカの10時間後にローマが朝になり、その6時間後にニューヨークが、その2時間後にメキシコが朝になり、新しい日を迎えます。

 ですから、この対句は、過去と現在と未来を表現しているともいえます。 

 

 これが9~10行目「この地球では/いつもどこかで朝がはじまっている」という意味です。

 

比喩と倒置

 第二連の最初「ぼくらは朝をリレーするのだ」は、第一連の最後「この地球では/いつもどこかで朝がはじまっている」をたとえています。

 次々に朝がやってくることをリレーにたとえているのです。このように、たとえを使う表現技法を比喩(ひゆ)といいます。

 

12~14行目を見てみましょう。

 

12  ぼくらは朝をリレーするのだ

13  経度から経度へと

14  そうしていわば交替で地球を守る

 

 どこに句点(。)をつけたらよいでしょう。12行目と14行目ですね。しかしそうすると「経度から経度へと/そうしていわば交替で地球を守る。」と、変な文になります。これを意味が通じる文に直すと次のようになります。

 

経度から経度へと、ぼくらは朝をリレーするのだ。

そうしていわば交替で地球を守る。

 

 12行目と13行目の順序が逆になっていますね。このように文の中身の順序を入れ替える表現技法を倒置(とうち)といいます。倒置では、強調したい部分を最初にもってきます。「ぼくらは朝をリレーするのだ」を強く読者にうったえかけたいのだ、ということがわかります。

 14行目の「いわば」は、「いいかえると」「たとえていえば」という意味です。「たとえ」なのですから、これも比喩です。つまり「いつもどこかで朝がはじまっている」=「朝のリレー」=「そうして……交替で地球を守る」ということになります。

 

 朝が来ると、私たちは「地球を守る」ということになるのでしょうか。別に宇宙人の侵略に備えているわけではありませんから、それは読者であるみなさんが想像してくれてよいわけです。

 15行目~「眠る前のひととき耳をすますと/どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる」というのも、どんなに耳をすましていても遠くの目覚まし時計の音なんか聞こえるはずがありません。「あなたが眠るとき、だれかが起きてくる」という意味の比喩です。

 17行目の「それ」は、指示語といって、何かを指し示す(さししめす)言葉です。直前の「眠る前のひととき耳をすますと/どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる」という部分を指しているのですね。ですから17行目以降「それはあなたの送った朝を/誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ」というのは、

 

あなたが眠るとき、誰かが目を覚ましている。それは、あなたが過ごした一日(「地球を守る」という任務?)を、誰かが受け継いだという証拠なのだ

 

 という意味になります。

この詩の意味

 この詩は、次のように説明することができます。

北の寒い国が夜になれば、南の暑い国は朝になる。

大都会が夜になると、遺跡の町は朝になる。

過去から未来へと、この地球は、いつもどこかで朝になっている。

 

地球が自転しているため、いつもどこかが朝がはじまるということだ。

これは私たちが交替で地球を守っている、と言い換えることができる。

私たちが眠りに就くとき、地球の裏側では誰かが目覚めていることになる。

それは、あなたが過ごした朝を、だれかがしっかりと受け止めた、ということなのだ。

 

 「あなたが過ごした一日を、だれかがしっかりと受け継いだ」ということが、なぜ「地球を守る」ことになるのかは、疑問が残ることですが、作者がそう訴えかけているのですから「そうですか……」というくらいの受け止めしかできなくても、しかたないですね。

 

 ここで是非皆さんに覚えておいて欲しいことは、詩や小説などの文学的文章を読むときは、表現技法に注意して読むと、内容を深く考えることができるということです。

 光村の教科書では、最後のほうに「表現技法」をまとめたページがあります。

 しっかり暗記しておきましょう。


コメントに対する返事

あ 様 

対句について、補足解説しました。

上の解説をご覧下さい。

ご指摘ありがとうございました。

ルノーアール 様

どこがよくわからないのかな?

何を詳しく知りたいのかな?

教えてください。

そうしたら、詳しく解説したいと思います。

、あ 様

「柱頭を染める朝陽にウインクする」の意味

 

柱頭というのは、古代ローマ建築の、柱の先端部分のことを言います。

左の写真の矢印の部分です。

古代ローマの建築は、天井や壁が残っておらず、柱と梁とが青空の下にむきだしになっています。

 

ローマは観光地で、お土産物屋の露店がたくさんあります。

これらの露店は、朝早くから店の準備をしています。

この詩に出てくる少年も、そのような露店で働く一人なのでしょう。

暗い時間から外へ出て働いていた少年が、明るくなって柱頭が朝焼けに照らされているのに気づき、

昇ってきた朝日に「おはよう」のウインクをしたのではないでしょうか。


コメント: 7
  • #7

    、あ (金曜日, 26 4月 2024 12:05)

    柱頭を染める朝陽にウインクするの意味が分かりません

  • #6

    ルノーアール (木曜日, 25 4月 2024 11:10)

    わからん

  • #5

    匿名 (木曜日, 25 4月 2024 10:58)

    ためになりました。ありがとうございました。

  • #4

    小野寺るき (水曜日, 24 4月 2024 11:06)

    面白い

  • #3

    (水曜日, 24 4月 2024 10:19)

    対句のこと書いて

  • #2

    匿名 (月曜日, 22 4月 2024 07:37)

    学校でちょうど習っていたしでした。役に立ちました。ありがとうございます!

  • #1

    Yuuki (日曜日, 21 4月 2024 08:48)

    わかりやすく学べる解説をありがとうございます!中学の勉強の中で参考にさせていただきます!!