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説明的文章読解のポイントは、より速く、より正確に内容を理解することです。特に最近の入試問題(特に大学入試の共通テスト)、一問当たりのテキストの分量が非常に多くなっています。そして記述問題が増えています。
ですから、限られた解答時間の中で、より記述問題に割く時間を確保するためにも、より速く、より正確に、というのは必須の技能だと思います。
ここでは、「『不便』の価値を見つめ直す」を例にとって、どのように読むとよいかを考えてみたいと思います。
説明的文章は、筆者の言いたいことを的確に読者に伝えるための文章です。そしてそのために、一定の文章構成を持っています。
筆者の言いたいことをまっ先に行ってしまうのを頭括型と言います。一番最後に言うのを尾括型と言います。そして両方にあるのを双括型と言います。
「最初に自分の意見を言いなさい。それから、理由を言いなさい」と言われますが、これが頭括型の代表例です。発言など、比較的短い文章で用いられる方法です。
また、よく「序論・本論・結論」と言いますが、このように筆者の言いたいことを最後に持ってくるのが尾括型です。教科書の教材や、入試問題などはこれに含まれます。
双括型は、研究論文などの長い文章で用いられることが多いようです。
この、頭括型・尾括型・双括型は、文章全体でも言えますが、段落の中でも言えることです。ですから、段落の初めの方か終わりの方に筆者の言いたいことが書かれていることが多いと思います。
これを意識して(大切なポイント以外はサラッと読み飛ばして)テキストを読んでいくと、時間の節約につながります。
「『不便』の価値を見つめ直す」の最初の段落は、
とあります。これは読者への問いかけです。問いかけられると「自分はどうだろう」と心の中で思ってしまいます。そう感じたことがある人も、ない人もいるでしょう。いずれにせよ、これによって読者の興味・関心を、筆者の展開したい話題に引き込む役割をしているのです。
そして次の段落の冒頭に
となっています。はっきり自分の考えがまとまっていない人も、「ああ、そうだよな。『不便でよかった』なんてことないよな」と思ってしまう中学生は多いと思います。
しかし、誰もが正しいと思っていることを、ことさら「正しい」と主張しても、意見文としてあまり意味はありません。誰もが賛成してくれる内容は、意見として発表する価値が低いからです。ですからこの文章は、「不便でよかった」ことの説明をしようとしている文章であることが予測できます。
この「『不便でよかった』なんてことないよな」という読者の考えを「『不便』でよかったこともあるよな」と変えるのが、この文章での筆者のねらいであり、最も言いたいことだということがわかります。題名「『不便』の価値を見つめ直す」からもいえることですね。
このように、冒頭の問いかけを読むだけで、筆者の言いたいことが予想できてしまいます。
あとは、その言いたいことがどこに書かれているか、結論部はどこかを探していくだけで、筆者の言いたいことがはっきりとします。
これが「より速く」よむコツの一つです。
では、結論部はどこか、最速で見つける方法を考えてみましょう。
結論部は最後の方であることがわかりますが、一番最後であるとは限りません。一番最後は筆者の感想なり、今後やりたいことだったりするからです。
先に頭括型・尾括型・双括型の説明をしましたが、段落も同じです。そして各段落は頭括型で書かれることが多いようです。そこで少し面倒ですが、最初の段落から、最初の部分を抜き出してみます。
では、段落冒頭部を中心に、文章の構成を考えてみましょう。
1と2は導入です。
3と4は自分の経験を行っています。
5では「このような考えから私が着目したのが~『不便』の価値である。」と指示語を使ってます。指示語はその直前の内容を指し示すことがほとんどです。ですから4の最後の部分から「『不便』の価値」に気がついた、と言っています。最後の部分は、次のようになっています。
「しかし」は逆接の接続詞です。そして逆接の接続詞の直後は、筆者の意見が書かれることがほとんどです。
「一様に便利さばかり追求し続けることで~本当に豊かになっていくのだろうか。」というのは反語で、「いや、そうでなはい」と、内容を強く否定する言い方です。3と4での経験から5を導いた、ということがわかります。
6の「そもそも」というのは、何かを説明しだすときに使う接続語です。「『不便』とはどういうことだろう」と問いかけていますから、この段落は「不便」の意味の説明です。段落の最後に「つまり」とあります。これは今まで説明してきたことをまとめる接続語です。従ってこの段落での筆者の主張は、次の文になります。
7の冒頭は「すでに述べたように、一般に、」です。しかしこの直後に「しかし」があります。逆接の接続詞を使って一般論を否定したところに筆者の主張がありますから、この段落は「そうではない~『便利』の中にもよい面と悪い面があり、『不便』の中にもよい面と悪い面があると考える。」が筆者の主張です。
8は「それでは」で始まっています。これは話題を変え、次に進める接続語です。「それでは『不便のよい面』には、具体的にどんなものがあるだろうか。」とありますから、ここからは「不便のよい面」の説明となります。
9~11は、それぞれ「一つ目は」「二つ目は」「三つ目は」とありますから、その具体例の三つの説明であることがわかります。
この説明は12の冒頭「こうして集めた事例」が指示している内容です。これらの「事例を整理すると、『不便益』とは何かが浮かび上がってくる。」とあります。
13では、この「不便益」の説明です。冒頭に「まず」があり、次の文では「次に」、更に「また」とそれぞれ接続語により「不便益」の特徴を三つ説明しています。
14では、「これらの『不便益』は、『不便』だからこそ得られるものだ。」と言っています。
15では、「誤解してほしくないのは~」と「『不便』だからこそ得られるよさがあることを認識し、それを生かして新しいデザインを創り出そうというのが『不便益』の考え方」だ、と主張しています。
そして最後の16では、「『不便益』は、物事のデザインだけでなく、日常生活にも生きる発想だ。」とまとめています。では、どんな発想が「日常生活にも生きる」のかは示されていませんから、筆者の感想となります。
キーワードとは、文章などを読み解くための鍵となる大切な言葉です。
この言葉を読者が意識できるように、筆者はさまざまな工夫を凝らしています。
読者の注目を集めるため、キーワードにはカギ括弧(「」)をつけます。このテキストで言えば、次のものがキーワードとなります。
キーワードは、例えば「不便」など、普通に使われる言葉があります。しかし「不便」にはいろいろな意味があり、読者の受け取り方もさまざまです。このようなあいまいさを避けるために、筆者は定義文をつけます。
定義文は、そのキーワードが最初に出てきた所のすぐ近くにあります。
キーワードは、繰り返し使われます。あまり同じ言葉を繰り返すと、読者にはしつこく感じられますので、同じ意味でも違う表現で繰り返される場合もあります。
このテキストでは、カギ括弧でくくられていないにもかかわらず、繰り返して使われる言葉に「デザイン」があります。(括弧内は段落番号)
デザイン(英:design)というと、図案や柄(がら)などの、外見的な意匠を意味する言葉のようですが、実は外観や機能、性能などをより良いものにするための工夫が表れたもののことを言います。美しさとか、目新しさ、使いやすさなどを目指して工夫を凝らし、それが形になったものがデザインなので、図案や柄をデザインというわけではありません。
筆者は学者ですので、当然この意味で使っています。便利ばかり追求せずに、人の生活を豊かにするために、不便益に注目した工夫を形にしていきましょう、と言っているのです。
しまべあやか (土曜日, 27 1月 2024 13:11)
ありがとうございます!